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    Categories: 制度

ワークライフバランス?!

働き方改革で、給与減少?!

近年、「働き方の多様化」や「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を耳にすることが多くなりました。安倍政権が公表している「日本再興戦略」のなかにも雇用制度改革として職務を限定した「多様な正社員」の普及・拡大を目指すと明記されています。これらの言葉は、なんとなく聞こえが良く、労働者に働き方や働く場所の選択肢を与えているようにも思えますが、実際はどうでしょうか。

従業員を3000人以上抱える某大手企業Aの例をあげてみます。A社は長年、アルバイト以外『総合職正社員』のみでしたが、2013年に転居を伴う異動が発生しない『地域限定正社員』、2015年に職種を選択することができる『専門正社員』を導入しました。まさに働き方を従業員は選択できるようになったのです。
しかし、自ら進んで『総合職』以外を選択する従業員はほぼいないそうです。なぜならば、給与が明らかに違うからです。同じ年齢で『総合職』を100とすると、『地域限定』は80、『専門』は60となっているとのこと。「会社側と従業員側双方の同意のもと決定する」という規定があるのですが、『専門正社員』になった従業員の現実は、「同意させられた」という表現の方が正しいという声が聞こえてきます。

この“給与リストラ”のターゲットとなっているのが40代後半から50代です。バブル期に大量採用された世代であり、終身雇用制という制度があることを前提として入社した世代です。ある者は遠方への転勤をちらつかせられ『地域限定』に、また、ある者は40代後半になって初めて営業の第一線への異動を示唆され『専門正社員』になりました。年収700万円が、突如400万円になるのです。

給与減少の対抗手段は転職?!

年功序列の終身雇用制による給与体系では、40代に給与が伸びる仕組みになっていることが多いのです。会社側が本当に異動させる気があったかは不明ですが、この職群変更を繰り返すことにより、労働力を維持したまま、膨らんだ人件費を大幅に削減が実現できると見る向きもあります。

これに対し、従業員側の対抗手段としては“転職”があります。易々と収入を半減させるわけにはいかないと。実は、安倍政権は「失業なき労働移動の実現」として転職を推奨しています。雇用調整助成金から労働移動支援助成金(平成26年度予算301億円)へのシフトがその象徴とも言えるでしょう。この転職推奨も従業員側の収入減少につながるという見方もあるものの、給与リストラの対象にされるくらいならば転職によるキャリアチェンジに賭ける方が良いかもしれません。アベノミクスによる景気回復に伴い「転職35歳限界説はなくなった」との声もあります。厚生労働省が公表した平成26年度平均の有効求人倍率は1.11倍で、前年度に比べて0.14ポイント上昇するなど、数値面では転職環境がよさそうにも思えますが果たして・・・。

mio.kawana :