“過払い金バブル”が終焉
難関国家試験の一つである司法試験を突破したからといって一生安泰ではなくなってきました。“弁護士”と名乗るだけでステータスであったのは、今は昔のこと。「稼ぎがいいのは優良会社の顧問弁護士くらい」と弁護士からの嘆き節が聞かれることもあります。特に、債務整理や倒産処理を得意とする弁護士は厳しい状況となっています。改正貸金業法により過払い金問題が発生し、一時は収入が劇的に増えたものの、先行きは不透明です。
過払い金返還請求は、2006年12月に成立した改正貸金業法により出資法の上限利息が20%とされ「グレーゾーン金利」が撤廃されたことに端を発します。本来、払う必要がないにも関わらず、貸金業者に支払い過ぎた金利負担を「過払い金」と呼び、債権者は「過払い金」があれば過去に遡って返金を求めることができるというものです。しかし、ここにきて“過払い金バブル”も終焉を迎えようとしています。潜在的には10兆円とも言われた過払い金ですが、弁護士、司法書士が案件を我先に取り合ったため、さすがに案件数が減少してきたということでしょうか。
また、グレーゾーン金利撤廃以来、貸金業者の倒産・廃業が相次いでおり、請求しようにも請求できない事例が多く発生しています。武富士をはじめとして、SFCG、ロプロ(旧:日栄)、SFコーポレーション(旧:三和ファイナンス)、クラヴィスなど大手だけを例にあげてもきりがありません。貸金業者数自体もピーク時である昭和61年の4万7504件(登録業者数、金融庁公表)から、平成24年末では10分の1以下である2280件にまで激減しています。改正貸金業法が成立した平成18年(1万4236件)と比較しても6分の1となっています。相手がいなくては、もちろん請求できませんので。
経営難に陥る弁護士事務所も
有名俳優を広告塔として、多重債務者を対象とした債務整理業務を得意としていた法律事務所が、パート(アルバイト)事務員の一斉解雇した案件もあります。解雇を通告された人によると「業績不振だからとして突然、解雇を言い渡された」とのこと。「2010年代前半は鳴りっぱなしであった過払い金の相談の電話が、最近は全く鳴らなくなっていた」とも証言している人もいます。
また、近年、本店事務所フロア縮小や出張所の閉鎖を行ったり、かつて二ケタ億円の広告費を使っていたにもかかわらず、大幅に広告費削減を行っている法律事務所があるなど、法律事務所自体の経営が危ぶまれる状態に陥っているケースも珍しくありません。
こうした事務所は、単に過払い金返還請求の案件が減っただけではなく、少ない案件を獲得するために、広告に多くの費用を捻出したことや、相談料や着手金の無料化を進めたことで、業績悪化が進んでいます。新しい収益の柱を見つけなければ、弁護士と言えども、生き残りが厳しい世の中になってきました。