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    Categories: 雑感

苦境に立たされる印刷業者

設備投資をするのかしないのか・・・。」これが現在の印刷業者が抱える難問です。

印刷機械は日々進歩を遂げています。例えば「印刷の品質がオフセット印刷機に明らかに劣る」として敬遠されていたバリアブル機能の付いた高速連帳インクジェットプリンタも、対象物によってはどちらを利用するかオフセット印刷機と比較検討することができるほどの水準に近づいてきました。顧客から印刷業者に対する注文もより複雑になってきているなかで、バリアブル機能の付いた高速連帳インクジェットプリンタのように、1万枚に1万通り、しかもスピーディに印刷できる印刷機の導入を迫られるケースも少なくありません。顧客のニーズに応え、イノベーションを創出するという観点からすれば、重要な設備投資と言えるでしょう。

しかし、印刷機械の進歩は、印刷機械価格の上昇とリンクしています。バリアブル機能の付いた高速連帳インクジェットプリンタを導入しようとすれば、1台あたり数億円の初期投資が必須です。現状の印刷業界を見渡せば、そのような超高額投資を実行できるのは一部の大手印刷業者に限られます。そうなると必然的に、中小零細の印刷業者は従来から行ってきた紙の印刷物や出版物に注力するという選択しかなくなってしまうのです。もっとも、昔ながらの印刷機でメンテナンスを繰り返しながら、顧客からの注文品仕上げ収益を確保するというビジネスモデルは、黙々と印刷職人が作業するイメージではありますが、先行投資の回収さえ終われば、利益を生み続けるという堅実なビジネスモデルです。「何も無理をして巨額の設備投資を行う必要はない」と判断する印刷業者も多いのは当然でしょう。

問題は印刷物の受注価格の下落です。2008年のリーマン・ショック以降の景気低迷に伴い、企業は自社の経費について大幅な見直しを行いました。どの企業においても、真っ先に経費削減の可能性を指摘されたのは印刷物です。印刷物を廃止しデジタル化した企業もあれば、印刷物の印刷依頼先をより価格が安い印刷業者に切り替えた企業もありました。インターネットサイトを通じた依頼も一般化し、とにかく1円でも安い印刷業者に依頼するという風潮が広がったことが印刷業者にとって大きなマイナスとなっています。現在は、安倍政権の経済政策“アベノミクス”により、株価が上昇し、大手企業を中心として決算数字にも明るい兆しが出てきましたが、一度減らした印刷費を以前の水準に戻すという企業は皆無に等しいと言えるでしょう。

結果として、従来型の印刷物に注力している印刷業者間では、受注獲得のための値下げ競争が一層激しさを増しています。「(運転資金確保のために)赤字覚悟の見積を提出した」という話に代表されるように、中小零細の印刷業者を中心として“じり貧”という言葉がふさわしい状態になっている感が否定できません。また、ここにきて、原材料価格やエネルギーコストの上昇が印刷業者の収益性悪化を招いています。“売上が下がり、経費が上がる”という最悪の経営環境に経たされている印刷業者は多いのです。

mio.kawana :