年の変わり目、年度の変わり目にジョブローテーションを行う企業は多い。ジョブローテーションをいうと、単なる配置転換と捉える方も多いと思いますが、ジョブローテーションの本質は社員の所属部門を動かすということではなく、企業の人材育成計画に基づいた人事戦略、戦略的人事異動でなければなりません。しかし、残念なことに、当初、ジョブローテーションを導入した担当者の思いは戦略的人事異動だったとしても、時が経つにつれ、担当者自身の入れ替わりを経て、単なる“風物詩”となっている会社が非常に多いのです。部門長からすると、「新年度になるから、誰かうちの部署から出さないとな~」といったところです。
そもそも、ジョブローテーションは、終身雇用を前提とした企業内においてゼネラリストを育成しようとする日本ならではのシステムです。会社内の各部署で様々な業務を経験し、歳を重ねると同時に経営幹部に近づいていくというものです。ですから、昨今のように転職市場が活発化し、人材の流動性が高まってくると、機能しなくなるシステムと言えるかもしれません。
ジョブローテーションには、これを実施することによるメリットとデメリットがあります。
メリットとしては・・・
・多様な業務を経験するので、適材適所を把握し配置することができる
・複数の部門を経験するので、視野の拡大やより高い視座の獲得が期待できる
・様々な人と交わることで、企業内のコミュニケーションが円滑になる
・マンネリ化を防ぎ、従業員満足度向上や離職率の低下が期待できる
一方、デメリットとしては・・・
・一定期間で異動となるため、スペシャリストの育成が困難となる
・異動後は一時的に業務スキルが低下し、生産性が低下する
・希望しない異動により、当該社員のモチベーションを下げる可能性がある
・給与体系が職種によって異なる場合、導入にハードルがある
終身雇用という前提が崩れつつある今、ジョブローテーションの必要性が低下しているのは間違いありません。デメリットばかりが目についてしまうような会社も出てきています。
そのため、現在ではジョブローテーションに変わって、新規事業などの要員について希望者を募る「社内公募制度」(求人型)や、社員自らがキャリアやスキルに基づき異動を希望する「社内FA制度」(求職型)を取り入れる企業が増えてきています。どの制度を利用するにせよ、社員のモチベーションを維持しつつ、幹部候補者を選定、育成するというかじ取りを経営層、人事部門はしていかなければなりません。