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スポーツエリート校ビジネスモデルが窮地

「生徒数減少に歯止めがかかりません」と嘆くのは地方有名私立高校の事務長。予想通りとはいえ、年々減っていく生徒数を目の当たりにすると、ぼやきの一つも出てくるようです。地方の学校法人の経営が一層厳しいものとなっています。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年の総人口はすべての都道府県で2010年を下回ると想定されています。少子化が進み0歳から14歳までの人口は2010年(全国)を100とすると2040年は63.7。都道府県別にみると、青森県46.6、秋田県47.0など地方の減少が顕著(東京都は71.4)となっています。この少子化の影響をまともに受けるのは学校法人なのです。

従来、地方の私立高校がその差別化策の一つとして実施してきたのがスポーツによる知名度の向上。つまり、スポーツエリート校ビジネスモデルです。

例えば高校野球。甲子園出場校の選手をみると、特待生ばかりであるという話は有名です。例えば、2007年4月、専修大学北上高等学校が日本学生野球憲章に反し、有望な野球部員に対しスポーツ特待奨学金を支給していたことが発覚しました。当時の日本学生野球憲章では「選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない」と規定されていたことから問題となりました。その後、専修大北上の例に端を発し、高野連が調査に乗り出したところ、377校(全体の9.0%)が野球特待生を選手登録させていたことが判明しました。しかも、そのうちの116校は野球部における特待生比率が50%を超えていたのです。

特待生制度(学費を安く)などでスポーツエリートを集めて知名度を高める一方、その知名度によりひきつけられた多くの一般生徒から多額の学費を徴収し儲ける―。このスポーツエリート校ビジネスモデルがピンチを迎えています。人口の都市集中が一層すすんでおり、収益の元である一般生徒の数が右肩下がりになっているのですから、いくら知名度を上げようとも収益につながらないのです。実際に数年前にはプロ野球選手やJリーガーを輩出しているスポーツエリート校、私立千葉国際中学・高等学校を経営する学校法人千葉国際が民事再生法の適用を申請しています。

人口減少によりスポーツエリート校ビジネスモデルが崩壊すると、甲子園常連校のラインナップが変わるかもしれません。別の見方をすれば、特待生制度を続けられる、つまり、人口減少度合いが少ないと見込まれる都市部の高校が一層有利になるという結果を生み出すかもしれません。もちろん、甲子園、野球は、学校経営と切り離して純粋に楽しみたいものですが・・・。

mio.kawana :