色々な会社にお邪魔して、経営者の方とお話をすると、多くの会社で「事業継承」が話題になります。「自分ももう歳だから、あとを任せる人に会社を任せてのんびりしたい」なんて言う社長は珍しくありません。しかし、実際に事業継承をするかというと、それはしません。子息が社内にいて早く社長の席を譲りたい・・・・というケースを除き、多くの場合、「事業継承したい」は口だけで、いつまでも社長の椅子にしがみつきます。その方々の口癖は「まだ大丈夫!」です。
先日ご訪問した企業の総務部長は、「20年前から社長は後継者を探したいと言っていたがいまだ決まっていない」と言っていました。20年前からです。候補者は今まで何人もいたそうですが、「経験(年齢)の差」や「力量の差」を理由として、最終的には社長が「NO」と言い放つのが通例となっていたそうです。そうした同社ですが、ついに本気で事業継承について考えなければならない事態が発生しました。社長が倒れたのです。御年、83歳・・・・
「サクセッションプラン」という言葉をご存じでしょうか?
後継者を確保・育成するための計画のことです。サクセッションプランの主な目的は、経営者等のポストが急に空いてしまった際に、スムーズに次の適任者を任命しビジネスを継承するということで、BCP(事業継承計画)の一部です。労務行政研究所が発表した「企業の人事戦略に関するアンケート」によると、61.3%の企業が「(サクセッションプランを)現在は行っていないが、今後は行いたい」と回答しています。
サクセッションプランには以下のようなメリットがあると言われています。
- 有能な人材の早期発掘
- 有能な人材の流出防止
- 外部からの招へいしないことによるリスク回避
- 人材の育成と登用の見える化
- 個別育成による育成効果の向上
そして、以下のような順番で進めていきます。
- 経営理念・経営戦略の明確化
- 戦略実行に重要なキーポストの特定
- キーポストに求められる要件の明確化
- 候補者の選抜
- 候補者の育成計画の立案
- 育成計画の実行とモニタリング
- 候補者の登用検討
- 適切な配置
このなかで重要なのは、当然、キーポストの特定とキーポストに求められる要件の明確化です。ゴールを決めなければ、進むべき道(育成法)も決まりません。この要件は、会社として求められる能力とも言えます。ですから、サクセッションプランを作成、実施していくなかで、会社全体の能力を向上させることができるのです。
「事業承継」は、経営者の引退、もしくは病気などを連想させるため、口では言うものの実際は敬遠している経営者が多いなか、会社全体の能力向上のため、サクセッションプランに手を付ける会社は先見の明があると言えます。