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実はプロ野球球団で破産した企業も

2012年3月、プロ野球チームの運営企業(正確に言うと、元経営)が、裁判所から破産手続き開始決定を受けています。もちろん、プロ野球チームの運営企業と言ってもセ・リーグ、パ・リーグに所属する12球団の運営企業が破産した訳ではありません。破産に追いやられたのは、四国アイランドリーグplusに所属する徳島インディゴソックスの運営をしていた徳島インディゴソックス球団株式会社という企業です。
プロ野球関連の倒産事件として有名なのは、2011年7月に“ミスター阪神タイガース”掛布雅之氏が実質経営していた株式会社掛布企画の倒産でしょうか。しかし、これは掛布氏個人が飲食店展開等の企業経営に失敗しただけの話です。徳島インディゴソックス球団は個人ではなく球団です。四国アイランドリーグplus所属球団で全国的には認知度が低いとはいえ、プロ野球チームが倒産に追い込まれたことは、プロ野球人気の低迷の象徴的な事象と言えるでしょう。

四国アイランドリーグplusは、2005年4月に初のシーズン開幕を迎えました(当時のリーグ名は「四国アイランドリーグ」)。元西武ライオンズの石毛宏典氏が、将来プロ野球選手となることを希望している若者に、質の高い指導と技術向上の場を提供することを目的として株式会社IBLJを設立し、リーグ運営を行っています(現在、石毛氏は経営に関わっていません)。四国各県にプロ野球チームがあり、破産した徳島インディゴソックスはその名前の通り徳島県のチームです。
徳島インディコソックスは、2005年こそ2位だったものの、2006年からは4年連続でリーグ最下位。成績低迷と比例するように観客動員数も下降線を辿り、2005年には1試合平均800人前後だった観客動員数が数年後には400人前後と極めて厳しい状況となっていました。ちなみに比べるだけ無駄ですが、読売ジャイアンツのホームゲームの観客動員数は1試合あたり約3万7000人程度です。

当然、球団経営は行き詰まり、2010年のシーズンを目前にして徳島インディゴソックスのオーナーは会見を開き、その席上で「球団経営から撤退すること」を発表しました。理由は「安定的なスポンサー収入を得ることができなかった」ことだと言います。この結果、IBLJが徳島インディゴソックスの運営主体となるという異例の事態が発生しました。「財務状況を考えると球団存続は極めて厳しい状況でした。しかし、地元では『徳島インディゴソックスを徳島に残す会』ができ、署名集めを始めたことで、財務面を無視した状態で球団存続気運が高まっていました」と地元新聞記者は当時を振り返ります。
その後、2012年1月に地元企業数社が出資して株式会社パブリック・ベースボールクラブ徳島を設立し球団運営にあたることになったため、徳島インディゴソックスは無事2012年のシーズン開幕をむかえることができたというわけです。
なぜ、採算が取れるかもわからない企業がスタートを切れたのかということですが、それは、それまでの球団の累積損失を引き継がなかったからです。その額、約1億4000万円。その借金だけ残した、徳島インディゴソックス球団株式会社は破産手続き開始決定を受けたということです。

しかし、この歴史的とも呼べる“プロ野球球団の倒産劇”を全国紙はおろか、地元マスコミが一切報じていませんでした。地元記者に話を聞くと「地元が育ててきたプロ野球球団の倒産を騒ぐわけにはいかない」とのことでした。ゆえに、地元住民や地元中小企業はほとんど倒産劇に気づいていないのかもしれません。このように、表向きは特段変化が見られず、運営会社が倒産していたり、出資者が変わっていたりするケースは稀にあります。
プロ野球球団がひそかに倒産できるくらいですから、もっと知名度が低い企業であれば、推して知るべしですね。

 

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