安倍政権は「日本再興戦略」のなかで、ベンチャー企業や新事業を生み出す仕組みを整備し開業を促進、経済の活性化を目指すとしています。2014年1月に施行された産業競争力強化法によって、国立大学から大学発ベンチャー支援ファンドなどへの出資が可能となったのも、その流れの一つです。大学は、学問を習得する場所であるとともに、起業・創造の場所へ。大学にかかる期待は大きくなっています。
現在、どのような大学が多くの社長を輩出しているのでしょうか。民間の信用調査会社帝国データバンクが公表したところによると、上場企業から個人事業者まで全ての中で、出身大学が判明している社長は33万3270人だという。そのなかで、最も出身者が多い大学はこれまでに100万人以上の卒業生を輩出している日本大学で、2万5639人。出身大学が判明している企業の中では13人に1人が日本大学出身者ということになります。
「あなたとともに100万人の仲間とともに」が日本大学のキャッチコピーですが、キャッチコピー通り、“社長仲間”が最も多い大学は同大学ですね。2位の早稲田大学(1万3411人)の2倍程度という人数から見ても圧倒的な数です。以下、1位から15位まではすべて私立大学が占め、国立大学では東京大学(3892人)が最も多く、16位にようやく登場しています。
この総合ランキングは、学生数(卒業生数)に比例する傾向がありますが、社長の就任経緯でまとめ直すと、全く別のランキングに様変わりしています。なお、この33万3270人のなかで、社長就任経緯が明らかになっている社長は19万232人とのことです。
まずは「創業者が卒業している大学」をみると、人数だけでみれば日本大学が4529人と圧倒的ですが、当該大学卒業社長に占める創業社長の割合で比較すると、東京電機大学が48.7%(488人)がトップ、次いで工学院大学の46.3%(478人)となります。このほか、上位には大阪工業大学(38.4%)、東京理科大学(38.1%)など、教育、研究に基づく先端的科学技術を追求している理系大学が目立つことが特徴的です。情報技術系学部からソフトウェア関連業を、建築系学部からは設計業、測量業などを立ち上げるケースが多くなっています。
一方、「同族継承」、つまり「世襲社長が卒業した大学」では、その構成比が最も高いのは甲南大学で65.6%(1301人)です。以下、成城大学(62.8%)、愛知学院大学(61.1%)、成蹊大学(56.9%)と続いています。中堅私立大学と称される大学が多い一方、“最高学府”という別称を持つ東京大学は27.9%(530人)で50位となっています。
この東京大学や京都大学卒業生の比率が高まる就任経緯は、「内部昇格」や「外部招聘」となっています。京都大学出身社長のうち「内部昇格」で社長となった割合は17.2%で、他大学と比較して最も高いのです。東京大学出身社長のうちでは16.5%、3位も同じく旧帝大の大阪大学で16.4%となっています。「外部招聘」では、東京大学(268人)が圧倒的な卒業生数の差がある日本大学(270人)に迫るなど、既存企業での社長就任はこの3大学出身者が非常に目立っています。
大学は、受験生の視点から偏差値順(受験合格難易度順)で比べられることが多いです。しかし、大学が輩出した社長数に目を向けると、偏差値だけでは語れない特徴が見えてきます。この特徴が将来的な大学の価値に繋がるとも考えられることから、“輩出社長数”は大学にとっても、卒業生・在校生・受験生にとっても、重要な指標と言えるでしょう。