目標設定は、企業としての戦略の象徴であり、社員に対する人材育成の手段の一つです。それにもかかわらず、近年、非現実的な目標を設定する企業や部門が目についています。
例えば、Aという商品をBという市場に対して供給しているC社が昨年度10億円の売上をあげたとします。Aも変わらず、Bも変わらず、何も周辺状況が変わっていないのに翌年度の売上目標を20億円とC社が設定した場合、社員はどう感じるでしょうか?「よし、がんばるぞ!」と思えるでしょうか?本当の目標の150~200%くらいを追わせれば最終的には本来の目標(例えば10%増収)を達成できるとアドバイスする方もいますので、経営サイドからすると設定したい目標なのかもしれませんが、これでは社員のモチベーションは維持できません。組織が先々疲弊していくのが目に見えています。
現在、81.8%の企業で導入していると言われている「目標管理制度」は、こうした営業目標を絶対に達成させるための経営サイドの武器ではありません。あのドラッカーが体系化した「目標管理制度」は、「社員の経営への参画意識の向上」と「人材育成」を目的としています。このことを経営サイドは忘れてはなりません。特に、人材育成には効果的です。下記のようなメリットがあります。
- 自分自身の仕事をマネジメントできるようになる
- 自己に強い動機付けをもたらす
- 最善を尽くす願望を起こさせる
- 自分自身の視野を広げさせる
では、どのような目標を立てればよいのでしょうか。1985年に「目標設定理論」を提唱したロックとレイサムは、「本人が納得している目標については、容易な目標より困難な目標のほうが、曖昧な目標より具体的な目標のほうが成果が高い」と主張しています。言うまでもなく、“本人が納得している”という部分がポイントですが。大きく分けると4つの要素となります。
- 目標の困難さ=容易なものではないが、実現可能性があるもの
- 目標の具体性=「知識をインプットする」ではなく、「毎朝、15分間、新聞を読む」
- 目標の受容=納得しているか、本人が「やればできる」という感覚を持っているか
- フィードバック=有益なフィードバックを得ることが、動機付けを持続させる
みなさまの会社では、真に意味のある目標設定を行っていますでしょうか?
労働行政研究所の「人事労務諸制度実施状況調査」によると以下が目標設定に関する問題点です。ご参考まで。
- 関係部門との目標の連携がない
- 組織目標と個人目標の連携が薄い
- 個人目標のレベルにバラつきがある
- 上司が目標内容、レベルの指導や動機付けができていない
- 目標設定の面談が形式化している etc