労務行政研究所の発表によると、人事部門が「現在力を入れていること」のトップは「労働に関する法令順守」となっており、「人材育成」は第4位です。しかし、「将来、需要が高まるもの」でみると、「人材育成」がトップ、「メンタルヘルスケア」が第2位となっています。この結果からも、人事部門が板挟みとなっている理想と現実が見て取れます。従業員を育てたり支援したりするのが本来の人事部門の役割であると認識しながらも、日々、実際にやっていることは、残業チェックや休日出勤対応、従業員が起こしたトラブルの解決ばかりであるということでしょう。
そもそも、人事部門の役割は大きく分けて4つあります。
- 採用
- 教育・研修
- 人事労務管理
- 人材配置、人事制度設計を含む人事戦略
それぞれが専門知識を用いて業務を遂行する必要があるため、人事部門に十分な人員が割かれている大企業であれば、それぞれに担当がついています。しかし、中小企業ではこうはいきません。従業員数が100名を切っている企業であれば、多くの場合が、4つの機能を一人で担当しています。その結果として、人事部門担当者の業務量が膨張し、メンタル不調を訴える人が出てくることも珍しくありません。
業務を確実に、そして的確に処理していくために、人事担当者は、「人事労務管理などのルーティン業務をこなすための専門知識と、処理能力(オペレーティブな仕事を回す能力)」「人事戦略を企画・立案するための専門知識と、実行のための対人折衝能力(戦略的な仕事を行う能力)」を身につける必要があります。
しかし、ここに壁があります。人事部門の業務は季節性の高い業務が多いため、同一業務を短期間に複数回経験することが不可能なのです。採用活動は年一回ですし、年末調整に至ってはごく短期間に集中して実施するのみです。
こうした簡単には実務を経験できない状況ですので、疑似的に業務をイメージさせるために、詳細な業務マニュアルを作る必要があるでしょう。ルーティンワークも多いので抜け漏れがないように対応していきます。
そうなのです!実は人事部門の担当者こそマニュアル人間である可能性が高いのです。(中小企業の人事関連業務をすべて一人で行っている担当者の場合に限りますが。)
面接では「自分で考えて行動する人」を求めている人事部門担当者ですが、その求める人物像は、実は自分自身のウィークポイントであるかもしれません。