「On The Job Training」、つまり「OJT」は、現在、多くの企業で取り組まれている、現場における部下や後輩に対する指導のことです。といっても、「OJT」の明確なプログラムを保有している企業は少ないのが現状です。社員教育について、人事部にヒアリングすると「社員教育は現場に任せてますから。OJTですよ、OJT」と言う方が多いので、さらに一言、「どんな指導を実施しているのですか?」と聞くと、「現場に任せてますから・・・」と言います。みなさまの職場ではいかがでしょうか?
OJTを定義するとすれば「現場任せの社員教育」ではなく、「部下や後輩の成長のために、意識的に、かつ計画的に、そして継続的に行う指導」です。多くの企業で取り入れているOJTだからこそ、その認識の差が企業力の差にもなるでしょう。
OJTのルーツは第二次世界大戦後までさかのぼります。当時の連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが実施していた「Training Within Industry」、通称「TWI(監督者訓練コース)」が、その原型と言われています。TWIがマッカーサーによってもたらされ、日本政府主導で広められたのです。TWIには4つの要素があります。
- 仕事の教え方
- 改善の仕方
- 人の扱い方
- プログラム開発
これらの要素を実践して基本企業の代表格がトヨタで、カイゼンとかカンバンといった有名な手法が生まれました。「作業を要素に分解し、キーポイントを見つけ出し、正しいやり方を繰り返し教える」といった仕事の教え方がその原点です。また、TWIは「新人や未熟練者に対して仕事をどう教えるか」「職場の人間関係をどう作るか」に注目したところも特徴です。
OJTを実施する目的は、対象者の「能力開発」、「組織社会化」です。それを実現するためにOJT担当者に求められる能力は、TWIに基づいて考えると「作業を要素に分解する能力」、そして「育成対象者と向き合う能力」ということになります。
気付いた方もいるかと思いますが、実はOJTは、育成対象者を一人前にすることだけが目的ではなく、OJT担当者の能力向上も期待するプログラムです。OJT担当者は、育成対象者への教育を通して、部門業務の効率化を本気で考えたり、業務改善を進めたりする必要がでてきます。ですから、OJTは、意識的に、計画的に、継続的に実施する必要があるのです。
目先の営業数字等に捕らわれ、こうした“本気のOJT”を実施していない企業は、今は良くても、先行きは厳しいかもしれませんね。