2014年、札幌市電子図書館が電子書籍貸出サービスを本格化させました。これまでも電子書籍の貸出は行われていましたが、これまでは札幌市中央図書館の1階館内のみの専用端末(持ち出し禁止)での利用に限られていました。電子図書館がとして本格稼働してからは、自宅パソコンやスマホからでも電子化されている書籍を閲覧することができています。図書館であるからして、もちろん“無料”です。札幌市の図書館の貸出券を保有していれば利用可能となるので、同券を保有している約70万人に“無料版電子書籍”の閲覧権があることになります。
こういった電子図書館は、出版業界にとって、これからどのように付き合っていくべきか非常に悩ましい存在です。2010年ごろから「もうすぐ電子書籍が普及する」と言われながら、なかなか普及しない状態が続いていました。ここ数年、ようやく紙媒体から電子媒体へコミック(まんが)を中心として電子化が進み始めています。といっても、紙で500円のコミックを、電子版でも500円で売るなど、出版物の価格破壊が極力起こらないように注意しながらの電子化です。価格破壊が起こってしまうようでは、コンテンツを提供する出版社に多大な影響が出てしまいます。
そこに、70万人という現ユーザー、そして200万人の潜在ユーザー(札幌市の人口)を抱えたダウンロード代0円の電子書籍提供サイトが登場したというわけです。「紙媒体の貸出と同じで返却期間を超えれば閲覧できなくなる」「誰かが借りている時は予約となり同時には閲覧できないようにしている」と図書館関係者は無料でのコンテンツのばらまきを否定していますが、「無料で配っているに等しい」と出版関係者からは見られています。
この札幌市の流れは、その後、全国的に緩やかではありますが、広まっています。2017年11月時点では、63館が“無料版電子書籍”サービスを実施しています。利用者からすれば、無料で利用できるに越したことはないですよね。
主な電子図書館は以下の通りです。
さいたま市電子書籍サービス(埼玉)
桶川市電子図書館(埼玉)
八千代市電子図書館(千葉)
流山市立図書館 電子図書(千葉)
TRC豊島電子図書館(東京)
千代田Web図書館(東京)
大和市文化創造拠点電子図書館(神奈川)
まつばら電子図書館(大阪)
大阪市立図書館電子書籍(大阪)
堺市立図書館 電子図書館(大阪)